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SESは「やめとけ」といわれる理由を先輩エンジニアの体験談を交えて解説

「SES企業勤務はやめとけ」という声をSNSや口コミサイトで見かける方もいるかもしれません。実際、SES企業で働くエンジニアがネガティブな体験を語るケースも少なくありません。本記事では、SES企業勤務が「やめとけ」と言われる主な理由や、先輩エンジニアのリアルな体験談を取り上げつつ、実際にSESは悪い選択肢なのかを多角的に解説します。ぜひ参考にしてください。

目次

1.SESとは?

まずは「SES(システムエンジニアリングサービス)」という言葉の意味を整理しましょう。「SES」 とは、ITエンジニアにクライアント企業へ常駐してもらい、開発や運用保守、インフラ構築などの技術支援を行うビジネスモデルのことです。派遣や請負契約と似ている部分もありますが、多くの場合は 「準委任契約」 と呼ばれる形態で行われます。

エンジニアが提供する「作業時間」に対して費用が発生する契約形態です。成果物の完成責任を負わない点が、請負契約との大きな違いと言えます。

SES企業に所属するエンジニアは、その企業の正社員や契約社員として雇用されます。雇用契約を結ぶ相手はクライアント企業ではなく、あくまでSES企業です。

派遣は派遣元会社が労働者を送り込み、受託先が直接指揮命令を行う形態です。派遣法の規制を受け、マッチング期間などに制限があります。一方、SES(準委任)では成果物の納品責任がない代わりに、クライアント先がエンジニアを管理する事例が多く、形式上は派遣と異なるにもかかわらず、実態はほぼ派遣同様となっている「偽装請負」的なケースが問題視されることがあります。

前述の通り、 請負契約は完成物に責任を負うため、納期や品質管理を請負企業が主体的に行います。SES契約では、エンジニア自身の作業時間に対して報酬が支払われ、成果物へのコミット度合いが低いという特徴があるのです。

IT需要が高まり、エンジニア不足が深刻化する中、SES企業は「必要な期間だけエンジニアを確保したい」と考えるクライアント企業のニーズを満たす存在として急速に増えてきました。クライアント企業からすると、正社員を一から育成するコストをかけずに、即戦力のエンジニアをプロジェクト単位で活用できるメリットがあります。

一方、エンジニア側にとっては、案件ごとに異なる技術や環境を経験できる利点がある反面、「やめとけ」と言われる要因もいくつか存在します。本記事では、その理由を深掘りしていきます。

2.SESはやめとけと言われる理由

「SESはやめとけ」という声が後を絶たないのは、いくつかの構造的な問題や労働環境の実態が背景にあります。ここでは、代表的な理由を深掘りして解説します。

案件を選べない・配属先の自由度が低い

SES企業は営業が獲得した案件にエンジニアを割り当てる仕組みであり、本人の希望やスキルと合わない案件に回されることも少なくありません。例えば「開発をやりたいのに運用やテストばかり」などといったミスマッチは、ストレスの大きな要因になります。

クライアント先の環境に左右される

実際の勤務先はクライアント企業なので、残業や休暇取得のしやすさ、人間関係などが直接SES企業に管理されていない場合が多いです。劣悪な環境にアサインされても、なかなか改善要望が通りづらく、「やめとけ」と言われる根拠になります。

スキルアップの方向性が不透明

多くの案件を渡り歩くことで広い経験を得られる反面、一つの技術を極める機会を得にくいというデメリットがあります。保守やテストに偏った仕事が続くと「何年やってもプログラミング経験が積めない」と焦りが高まり、「将来性が薄い」と見なされがちです

還元率の低さ・不透明さ

SES単価と呼ばれる契約額は決して安くない場合が多いですが、エンジニアにどれだけ還元されているかが不透明な企業が存在します。複数の下請け層を経由してマージンが削られ、手取りが思ったより低いという不満が「やめとけ」と言われる理由のひとつです。

キャリアパスや人事評価が曖昧

クライアント先で働くため、SES企業内での上司や人事担当者との接点が少なく、どのように評価され、どのように昇給・昇進するのか分かりにくいという課題があります。長く務めても昇給がわずかで、将来に希望を見出しづらいケースも珍しくありません。

3.先輩SESの体験談

「やめとけ」と言われる実情をさらに具体化するため、先輩エンジニアの事例を見てみましょう。(仮名や一般的な内容をもとに、あくまで複数事例の集合として構成しています)。

Aさん(26歳・保守案件ばかりで転職)

「1年目からずっとインフラ運用と保守しかやったことがなく、気づけば3年目。プログラミングを学びたいと思っても案件を変えてもらえず、結局自社開発企業に転職しました。ネットで『SESはやめとけ』と言われる理由を痛感しましたね。」

Bさん(30歳・還元率の差を実感)

「最初のSES企業は、契約単価80万でも給料は20万台。転職先のSESは還元率を公開していて、同じ単価でも給料が5万以上アップしました。SES=搾取とは限らないけど、会社選びを間違えるとしんどいのかもしれません。」

Cさん(28歳・リモートできず通勤負担が重い)

「コロナで他社のエンジニアはリモートワークしてるのに、自分は客先が『セキュリティ上出社必須』と言い張るから毎日満員電車。営業に相談しても『契約上仕方ない』の一点張りで、精神的にきついです。」

Dさん(24歳・SESでスキルアップ成功)

「新卒入社したSES企業は、研修がしっかりあってJavaやデータベースを基礎から教わりました。2年目には大手企業の開発案件に入れて、上流工程にも少しずつ関わっています。周りは『やめとけ』って言うけど、今のところ悪くないですよ。」

4.本当にSESはやめとくべきなのか?

「SESはやめとけ」と一括りにされがちですが、実際には会社や案件次第で大きく評価が変わります。ここでは、SESが本当に悪い選択肢なのか、多角的な視点で考えてみましょう。

大手SIer系列のSESや、還元率を公開している良心的な企業も存在します。一方で多重下請けの末端だったり、給与や労働環境をまったく改善しない企業もあります。そのため「どこのSES企業に入るか」でエンジニアの満足度は大きく変わるのです。

短期間で多様な技術・業種を経験したいならSESは一定のメリットがあります。しかし「一つのサービスを長期的に成長させたい」「最新技術を突き詰めたい」という志向が強い人には、しばしば不満が募るかもしれません。

「やめとけ」と言われる要因の多くは、営業とのコミュニケーション不足や会社選びの誤りに起因することもあります。希望の案件を明確に伝えたり、キャリア面談を活用するなどのアクションを起こせば、今の環境を変えられる場合もあるでしょう。

5.SESで働くメリット・SESが向いているエンジニアの特徴を解説

SESにはネガティブな意見が多い一方で、ポジティブに活用しているエンジニアがいるのも事実です。ここでは、SES特有のメリットと、どのような人が向いているかを紹介します。

  • 多様な案件・スキルを習得しやすい
    短いスパンで複数のプロジェクトを渡り歩くこともあり、広い視野を得られます。このことから、自分がどの技術や業種に合っているかを試していきたいエンジニアには最適と言えるでしょう。
  • 未経験や若手でも採用されやすい
    大手自社開発だと即戦力を求められるケースが多いですが、SESは研修体制を持つ企業も多く、未経験・第二新卒の方でも挑戦しやすいメリットがあります。
  • 人脈形成の機会が豊富
    クライアントごとに新しいメンバーと働くことで、人脈が広がりやすいのがSESの魅力です。フリーランスや別の企業への転職を視野に入れている方には、そのネットワークが役立つかもしれません。

6.優良SES企業の見極め方

「やめとけ」と言われる理由の多くはブラック企業的な実態にあるため、優良SESを選びさえすれば、快適かつ成長しやすい環境を築くことも可能です。以下のポイントを押さえて企業をリサーチしてみましょう。

  • SES単価・経費の透明度
    社内でSES単価や還元率をある程度公開している企業は、エンジニアを大切に扱う傾向があります。交通費や資格取得費用などをどこまで負担してくれるかも確認すると安心です。
  • キャリアサポート・研修制度の実効性
    定期的にキャリア面談を行い、エンジニアの希望やスキルを踏まえた案件アサインを実践しているかをチェックしましょう。「資格取得補助」や「勉強会支援」などの制度があっても、実際に活用されているかどうかを見極めるのが肝心です。
  • 法令遵守・コンプライアンス意識
    偽装請負や多重下請けを避けるため、契約形態や派遣法に配慮しているか、社員が相談しやすい窓口があるかなどを面接で確認すると、ブラック企業を回避しやすくなります。
  • 社内コミュニケーション・帰属意識の強化
    帰社日やイベント、オンラインミーティングなどで社員同士の交流を促進する企業は、エンジニアが孤立しにくいです。長期的に働くほど、こうしたフォロー体制の有無がモチベーションに直結します。

7.まとめ

SESは「やめとけ」と言われがちな一方で、企業選びを間違えず、案件アサインや還元率が透明な環境を得られれば、幅広い技術経験や人脈を得る好機にもなります。大切なのは、SESだから悪いと一括りにするのではなく、自分のキャリアプランや性格に合っているか、そして企業がエンジニアを適正に扱っているかを見極めることです。やりたい技術や働き方の希望を営業担当にしっかり伝え、疑問点を入社前に確認しておけば、SESを有効なステップとして活かす道が開けるでしょう。

SES企業 還元率研究所
大手SIerやITスタートアップでエンジニアとして15年勤務し、現在はエンジニア及びIT業界専門のライターとして活動するフリーランスが運営。SESに関心がある・SESの仕事に悩んでいる方向けに、SESの仕事内容や還元率の裏側、転職のコツなどを紹介します。
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