こんなSES会社は詐欺!?詐欺と言われるSES企業の特徴と、優良なSES企業の見極め方を解説

近年のIT業界では、システムエンジニアリングサービス(SES)企業が急増し、多くのエンジニアが在籍している一方で、「詐欺」「経歴詐称」などのネガティブな噂を耳にすることもあります。なぜそんな悪評が広まってしまうのでしょうか。本記事では、詐欺と言われがちなSES企業の特徴や、経歴詐称の実態、そして優良なSES企業を見極めるためのポイントを詳しく解説します。
1. SES企業とは

まずは前提として、SES(システムエンジニアリングサービス)という仕組みを理解しておくことが大切です。ITエンジニアにとって身近な働き方でありながら、誤解やグレーゾーンが多い契約形態でもあるため、ここではSES企業がどんな形態で事業を行っているのかを整理してみましょう。
1 SESの基本形態
SESとは、ITエンジニアをクライアント企業に常駐させ、プロジェクト支援を行うビジネスモデルのことを指します。エンジニア本人はSES企業との雇用契約を結びつつ、日々の業務をクライアント先で遂行するケースが一般的です。
SESの特徴
- エンジニアの作業工数(人月)に応じて報酬が発生する準委任契約である
- 成果物(納品物)ではなく、作業提供自体に対して対価が支払われる。
- プロジェクトが終了すると別のクライアント先に配属されることも多く、短期・中期の案件を転々とする場合がある
2 SES企業が増えた背景
IT人材不足やプロジェクトの繁閑に対応するため、自社で正社員を抱えるリスクを避けたいクライアント企業がSESモデルを積極的に採用してきました。その需要に応える形で、多数のSES企業が新規参入した結果、業界全体が急拡大しています。
- クライアントのメリット:必要な時期だけ即戦力のエンジニアを確保できる
- SES企業のメリット:エンジニアを雇用しクライアント先で常駐してもらうことで継続的な収益を得られる
- エンジニアのメリット:さまざまな案件を経験し、スキルの幅を広げられる可能性がある
しかし、SES企業が乱立するに伴い、中には「詐欺まがい」と言われるような不誠実な企業も少なからず存在するのが現状です。
3 SES企業おけるトラブルの原因
前述のようにSESの仕組みは多様なメリットをもたらす一方で、下記のようなトラブルに繋がりかねないデメリットも存在します。
- 指揮命令系統の問題:契約上はSES企業がエンジニアを管理すべきですが、実際にはクライアント側が直接指示を出すケースが多く、「偽装請負では?」との指摘が起こりやすいです。
- 還元率の不透明さ:高還元率を謳いつつ、実際にはエンジニアが思ったほど給与を得られないトラブルも発生しやすい領域です。
- 現場要件とのアンマッチ:案件を受注するためにSESエンジニアの技術力を盛って提案するケースもまれにあります。こういった場合クライアントが求める要件と実際の技術レベルが合わず、働きづらさを覚える可能性が高いです。
ここでは特に「詐欺」や「経歴詐称」と呼ばれる問題に焦点を当て、どのようなSES企業が危険なのかを掘り下げていきます。
2. 「詐欺」と言われるSES企業の特徴

ネット上では「このSESは詐欺だ」「こんな企業は絶対やめたほうがいい」といった声が上がることがあります。その背景には、いくつかの典型的な悪質パターンが見られます。以下では、代表的な特徴を取り上げてみましょう。
1 SES単価や還元率が極端に不透明
SESでは、クライアントから支払われる「SES単価」がエンジニアの給与の源泉になります。たとえば月100万円で契約されている場合、その中からエンジニアへの報酬と企業のマージンが差し引かれるわけです。ところが、詐欺的企業ではこの部分が著しく不透明になっているケースがあります。
具体例
- 入社前に還元率を伝える、と聞いていたにも関わらずあやふやのまま入社手続きを進められる
- SES単価が高いことを隠し、「単価が安いから給与も安い」と偽る
こうした不正が行われる背景には、エンジニアが自分のSES単価を正確に知らされないまま働く構造があると言えます。
2 案件ガチャがひどい、配属先を選べない
詐欺企業とまでは言い切れなくとも、悪質なSES企業ではエンジニアが希望する技術や案件をまったく考慮せず、営業が自社の都合で配属先を決めることが多いです。
- 過酷な労働環境やスキルアップにならない業務であっても、契約を優先し、エンジニアの意志を無視する
- 長期的にエンジニアが不満を抱える原因となり、結果的に「詐欺まがい」と捉えられる
3 偽装請負や経歴詐称を行う
本来、請負契約であれば指揮命令は請け負った企業側が握るべきですが、実質的にクライアントがエンジニアへ直接指示を出す「偽装請負」が横行する場合があります。さらに、一部のSES企業では経歴詐称を行うケースもあり、これは後述の「経歴詐称」の章で詳しく説明します。
- 「本人が持っていない資格をスキルシートに勝手に追加する」
- 「経験年数を大幅に水増しして、単価を不正に吊り上げる」
- 「エンジニア本人も知らない架空のプロジェクト経験を勝手に盛り込む」
これらの行為は詐欺と見なされても仕方のないレベルの問題行為です。
4 コンプライアンス意識が低い
健全なSES企業であれば、労働基準法や派遣法、下請法などの各種法令を厳守しようという意識が高いものです。しかし「詐欺会社」と呼ばれる企業の多くはコンプライアンスに無頓着とされています。
- 長時間残業を放置し、残業代を出さない(サービス残業)
- ハラスメントを訴えても取り合わない
- 曖昧な契約書によりエンジニア側だけが責任を負う形になる
このような状況が蔓延すると、「エンジニアを使い捨てにしている」「詐欺会社だ」と言われてしまうのも無理はありません。
3. 経歴詐称に関して

SES企業が「詐欺まがい」と非難される理由の一つに、経歴詐称があります。ここでは、経歴詐称の実態や、なぜ行われるのか、そしてどのようなリスクがあるのかを解説します。
1 経歴詐称とは
経歴詐称とは、エンジニアのスキルシートや職務経歴書に、実際には経験していない技術やプロジェクトを記載したり、経験年数を水増ししたりする行為です。SES企業がエンジニアをクライアントに売り込む際に、単価を上げる目的や他社との競合に勝つ目的で、経歴を偽装する例があります。
- 「本当はJava開発を半年しか経験していないのに、3年経験と書かれていた」
- 「AWS資格を持っていないのに、スキルシートに保有資格として記載されていた」
2 なぜSES企業が経歴詐称をするのか
よくあるケースとして、下記三つの理由が挙げられます。
1. 高いSES単価を得るため
経験豊富なエンジニアほど単価が高くなる傾向があるため、スキルシートを盛ることでクライアントに高額の請求ができる。
2. 案件獲得の競争に勝つため
SES業界には多くの企業が存在し、少しでも魅力的な人材に見せることで営業を成功させようとする。
3. エンジニア本人の同意や意思に関係なく企業が一方的に行う
「気づいたら自分の経歴が水増しされていた」という事例もある。
3 エンジニア本人が知らない場合も
悪質なSES企業では、エンジニアに無断で経歴を改ざんしているケースもあります。本人が現場に入って初めて「聞いていた仕事内容と実際の要件が全然違う」「現場のテストで厳しい質問をされる」といった事態になり、経歴詐称に気づくケースもあるのです。
- 本人のスキルと現場の要求が合わず大変な思いをする
- クライアントからの期待に応えられないケースが増え、精神的にハードな仕事となる
- プロジェクト先から「詐称しているのでは?」と疑われ、信用を失うリスクが高まる
こうした問題はエンジニア本人のキャリアや評判に大きなダメージを与えかねません。
4. SES企業が経歴詐称をする理由

前章と関連しますが、改めて経歴詐称を行うSES企業の背景や動機をもう少し深掘りしていきます。
4.1 単価競争が激しい
SES市場は多数の企業がひしめき合う、いわゆるレッドオーシャンです。クライアントから「同じスキルならもっと安く雇えるエンジニアを探す」と言われるケースも珍しくありません。そこでSES企業は少しでも高い単価を獲得するため、エンジニアを「スーパーマン化」して営業せざるを得ないという構図が生まれます。
- 「1年のJava経験を3年と書いて単価を月10万円上乗せする」
- 「AWS資格がないのに、あると見せかけて単価をアップする」
4.2 案件を失わないため
クライアントから「このスキルを持ったエンジニアを5人ほしい」と言われた際に、社内にそのスキルを持つ人が3人しかいない場合など、2人分は経歴を盛ってでも穴埋めし、契約を成立させようとする悪質な動機が働きます。
4.3 短期利益の追求
悪質なSES企業は、長期的にエンジニアやクライアントとの信頼関係を築くよりも、短期的な利益を最優先しがちです。経歴詐称で受注を増やせば売上とマージンが増えるため、こうした不正行為をやめられないというわけです。
5. 経歴詐称をするSES企業で働くリスク

エンジニア本人が経歴詐称を望んでいなくても、企業側が勝手に偽装しているケースがあると先述しましたが、そのような企業で働くと具体的にどんなリスクがあるのでしょうか。
1 スキル不一致で現場が混乱
経歴詐称によって、実力以上の案件に配属されると、現場で業務をこなせずトラブルに発展する可能性が高くなります。
- 「Java経験3年と記載されていたが、実際は1年未満。中級〜上級レベルのタスクに対応できない」
- プロジェクトが遅延し、クライアントやSES企業と深刻なトラブルになる
エンジニア本人の評価も大幅に下がり、キャリアに大きなダメージを受ける恐れがあります。
2 エンジニアの信用が損なわれる
クライアントはSES企業の事情に詳しくないことも多く、エンジニア個人が経歴を偽っていると判断する場合があります。エンジニア本人が嘘をついていないにもかかわらず、「詐称しているのでは?」と疑われ、キャリアに傷がつくリスクを抱えるのです。
5.3 違法行為や損害賠償のリスク
経歴詐称は場合によっては詐欺罪に触れる可能性があり、企業として大きな法的リスクを負います。エンジニア自身も状況によっては共犯とみなされる恐れがゼロではなく、最悪の場合は損害賠償請求されるシチュエーションも考えられます。
5.4 長期的なキャリア形成が難しくなる
嘘の経歴を武器に高単価でアサインされたとしても、本当のスキルが身についていないままでは、将来的に転職やフリーランスとして活動する際に苦労します。実力に見合わない案件を経験し続けると、スキルギャップが拡大するばかりで、長期的なキャリア形成を阻害しかねません。
6. 優良なSES企業の見極め方

「詐欺」と言われるようなSES企業に引っかからないためには、どのような基準で会社を選べば良いのでしょうか。ここでは、信頼できるSES企業かどうかを判断するポイントをご紹介します。
1 SES単価や還元率を一定程度公開している
- 「還元率80%!」などの謳い文句だけでなく、具体的に何が差し引かれるのか、交通費や社会保険料を誰が負担するのかなどを明示していない企業は要注意。
- 信頼できる会社は、単価やマージンの内訳、エンジニアへの支給方法をある程度オープンにします。昇給やボーナスの計算根拠を社内で共有している企業も多いです。
2 エンジニアのキャリア支援を重視
ただ案件にアサインするだけでなく、エンジニア個々人のキャリアに真剣に向き合っている企業は信頼できると言えるでしょう。
こう言った企業は、例えば以下のような制度を設けています。
- 定期面談:エンジニアが希望する技術や案件をヒアリングし、配属先選択に積極的に反映させる姿勢
- 研修や資格取得支援:ただ稼働させるだけでなく、技術力向上の仕組みを整えている企業はエンジニアを大切にしている
- キャリアパス制度:リーダー、マネージャー、アーキテクトなど昇格プランがはっきりしている
3 契約書や労働環境が透明
契約書や労働環境の透明性が高いことも重要です。信頼できる企業には下記のような特徴があるので、重視してチェックしましょう。
- 偽装請負や派遣法違反にならないための管理
クライアント先との契約形態をエンジニアにも丁寧に説明し、就業条件を明確に伝える
- 残業や休日出勤の管理
サービス残業を放置せず、労働時間を正確に記録し、残業代をきちんと支給する
- 情報交換や帰社日の充実
エンジニア同士がコミュニケーションを取りやすく、悩みを共有できる環境を整備している
4 経歴詐称を防ぐ仕組みがある
先ほどから挙げている通り、経歴詐称はエンジニア本人にとってもデメリットの大きい危険な行為です。
そのため、信頼できる企業は下記のようにで経歴詐称を防ぐ仕組みを整えています。
- スキルシートをエンジニア本人に確認させるプロセス
最終的に本人が確認を挟むフローを設け、勝手に経歴を盛られるリスクを軽減する取り組み
- 営業とエンジニアが一緒に客先面談前の打ち合わせを行う
事前にスキルシートを確認し、虚偽記載がないかチェックができる
- 顧客への信頼を長期的に築く企業理念
短期的な利益だけでなく、コンプライアンスを重視して長く取引を続ける方針の企業ほど安心できる
5 口コミや評判を確認
信頼できる企業かどうかを判断する上で、転職サイトやSNSで掲載されている口コミや評判は非常に重要な情報源です。
下記のようになるべく様々な情報源や意見を参考にし企業を見極めましょう。
- 転職サイトやSNS、エンジニアコミュニティなどを活用し、複数のレビューを総合して判断する
「社内で経歴詐称が常態化している」「単価や還元率の説明が曖昧」などのマイナス意見が多数見られる企業は避ける - 「面談時に具体的な契約内容を丁寧に説明してくれた」「還元率の仕組みを公開している」「資格取得事例が豊富」などのポジティブな意見が多い企業は評価が高いと考えられる
まとめ

SES企業のなかには「詐欺まがい」「経歴詐称が横行」といった悪評を持つ会社が実際に存在し、高還元率をうたいながら実質的には低賃金だったり、エンジニアに無断で経歴を偽装したりするなど、多くの問題行為が報告されています。一方、優良なSES企業では、還元率や契約内容を明示し、エンジニアのキャリア支援に力を入れ、コンプライアンスを徹底しているのが特徴です。
そのため、入社前に情報収集を怠らず、スキルシートや労働条件が明確かどうかをしっかり確認することが大切になります。自分の経歴やスキルを正しく評価してくれる企業を選ぶことが、エンジニアとしてのキャリアを健全に伸ばす第一歩です。もし、面談や問い合わせ時の対応に少しでも不審な点があれば、慎重に検討し直す姿勢を持ちましょう。誠実な環境で働けるよう、最終的な意思決定は焦らずに行うことが大切です。